2021.10.01更新

 「タックスヘイブン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 タックスヘイブンとは「租税回避地」のことであり、課税が完全に免除されたり著しく軽減されている国や地域を指します。

 つまり税制が優遇されている場所のことです。

 その中でも特に有名なのはケイマン諸島やバージン諸島などが挙げられます。

 多国籍企業や富裕層が税金から逃れるために、これらの国や地域に多額の資産を移しているのが現状です。

 極端な場合では、脱税行為やマネーロンダリング、テロなどの犯罪の資金に悪用されるケースもあるようです。

 このように以前より問題視されてきたタックスヘイブンですが、2021年に開催された先進7カ国の財務大臣による会合(G7)で、課税逃れに対する国際ルールが合意されました。

 この会合では法人税率の引き下げ競争に歯止めをかける共同声明が出され「最低税率15%以上」を目指す方針で一致しました。

 とはいえ、色々な利権や思惑が錯綜(さくそう)する中、今後は先進国のみならず新興国も交えた交渉で、どのような国際的な結束を見せられるかが問われてくるでしょう。

 しかし今回の会合で合意されたタックスヘイブン対策は、大きな時代の変革であることは間違いなさそうです。

 ちなみに、ときどきタックスヘブン(税金天国)と勘違いしている人もいるようですが、それは間違いです。

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.09.01更新

 「脱サラして個人で事業を始めようと考えています。その際、資金を調達する先としてはどこが理想的なのでしょうか」という質問がありました。

 開業資金を調達する場合、一般的には親族から借りたり、銀行から融資を受けるケースが多いと思います。

 友人などから借りるという方法もありますが、お金のトラブルは後々、大変なことになるためできるだけ避けたほうがよいでしょう。

 そこで、親族からお金を借りる場合は税務上、気を付けなければならない点がいくつかあります。

 例えば、きちんと契約書を作成して毎月、通常の金利で利息や元本の返済を行っていても、生計を共にしている親族への利息は必要経費とはなりません。

 また契約書を作成せずに返済もしていない状況であれば、借りたお金は「贈与ではないか」と税務署から指摘を受ける可能性もあります。

 そうならないためにも、親族から借りる場合であってもきちんと契約書を作成し、その契約書に則って返済しましょう。

 とはいえ、長い時間をかけて商売をしていくわけですから、やはり銀行との関係は大切になります。

 実績と信用を作って将来のチャンスやピンチのときにも融資が受けられるように、早いうちから銀行とのパイプを作っておいたほうがよいかもしれませんね。

 新たな人生のスタートでつまづかないように気を付けましょう!

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.08.01更新

 フリーマーケットなどで不要となった日用品や古本などを売って、家の中の整理整頓とお小遣い稼ぎの一挙両得を楽しんでいる人も多いでしょう。

 最近ではスマートフォンのアプリを利用して簡単に売ったり買ったりすることができるようになり、ますます便利になっています。

 さらに不要品を売ったら思ってもみなかった値段がついて、多額の利益を得るというケースもあるようです。

 では、このような場合に税金はどうなるのでしょうか。

 家具・自家用車・衣類など生活に通常必要な「生活用動産」の譲渡による利益に対しては、税金はかかりません。

 ただし貴金属や宝石・書画・骨とうなどについては例外もあり、1個または1組の価額が30万円を超えるような高級な品を売って得た利益に対しては税金がかかります。

 とはいえ、すべての利益に対して税金がかかるというわけではありません。

 このような譲渡による場合には特別控除(最高50万円)が認められており、50万円までの利益に関しては課税の対象外なので税金はかかりません。

 この制度があるため自宅にある生活用動産を売っても、ほとんどのケースで税金は発生しないのではないでしょうか。

 しかしながら、何度も反復的に売買を行って利益を得ているような場合には、その行為が営利目的とみなされて課税の対象となるので注意しましょう。

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.07.01更新

 2021年3月、旅行会社大手のJTBが、資本金を23億400万円から1億円に減少させました。

 そこで今回はこの「減資」について考えてみましょう。

 昨今のコロナ禍において、旅行業界はその影響を最も受けている業種のひとつです。

 企業の業績は悪化し今後も厳しい状況が続くと思われ、1秒でも早い回復の兆しを待ち望んでいることでしょう。

 そこで打った手が今回の減資です。

 減資には「有償減資」と「無償減資」があります。

 有償減資は会社の財産を株主に払い戻して行うもので、無償減資は会計上の処理により形式的に行うものです。

 今回のJTBの減資は無償減資の形をとりました。

 では、なぜそうまでして減資を行う必要があったのか?それは、減資をすることにより税制上のメリットを享受できるからです。

 法人税法では資本金の額により税制上の取り扱いが異なります。

 その額の分岐点が「1億円以下」か「1億円超」かなのです。

 例えば、資本金が1億円以下であれば法人税の税率が軽減されたり、繰越欠損金が全額控除できるようになったりと、多くのメリットを受けることができます。

 また法人事業税においては外形標準課税が適用されないため、税負担を抑えることが可能となります。

 これらのことから今回のJTB以外にも、やむなく減資に踏み切る大企業は他にもあるようです。

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.06.01更新

 2021年度の税制改正の大綱が閣議決定されました。

 その中にはポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業については「デジタル技術を活用した企業変革を推進する」ための「デジタルトランスフォーメーション投資促進税制」が新たに創設されます。

 また申告書や届出書における押印の廃止、電子帳簿保存の簡素化などがあります。

 例えば、法人税においてはポストコロナに向けて産業競争力を強化するため、デジタル技術を活用した企業環境を構築すべく、社内に整備されているサーバーやソフトウエアなどをクラウドシステムに移行するための投資(ソフトウエア・機械装置・器具備品の取得)を行った場合に税額控除(5%・3%)または特別償却(30%)ができる措置が創設されます。

 また整備面においては行政手続きで書類の押印義務が見直されます。

 そのため一部の例外を除いては、確定申告書や各種届出書についての押印が不要となります。

 さらに電子帳簿保存の簡素化については、従来は事前に必要だった税務署長の承認が廃止されたり、信頼性の高い電子帳簿については過少申告加算税を5%軽減するといった刺激策が講じられます。

 今後、データの電子化がますます加速していくため、どこまでデジタル社会の実現に近づけるかが期待されるところでしょう

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.05.01更新

 個人事業主が株式会社などの法人を設立し、その組織の中で現在の事業を引き継いで行っていくことを一般的に「法人成り」といいます。

 先日、飲食店のオーナーから「法人成りを考えていますが、具体的な注意点を教えていただけないでしょうか」という質問がありました。

 「法人成り」をした年の所得税の確定申告では「個人事業の廃止」「個人資産の法人への引き継ぎ」「法人からの給与の支給」など、さまざまな所得が発生し確定申告が大変複雑になります。

 例えば棚卸資産を法人へ譲渡する場合、通常の販売価額の70%未満で譲渡すると低額譲渡に該当します。

 その場合には、譲渡した販売価額と通常の販売価額の70%に相当する金額との差額を総収入金額に算入しなければなりません。

 また個人事業主のままであれば翌年の必要経費となる事業税を、特例的に見込み額で廃止年分の必要経費に算入できるなど特殊な取り扱いも生じます。

 その他では、例えば棚卸資産以外の土地建物を法人に譲渡すれば「分離課税の譲渡所得」、車両や備品などの固定資産であれば「総合課税の譲渡所得」として税金の計算を行います。

 さらに法人化後は、法人から給与を受け取るため給与所得なども生じます。

 このように個人事業を法人化する際には、通常の年とは異なる特殊な取り扱いが発生することが注意点となります。

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.04.01更新

 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)制度が今の低金利時代に合っていないという指摘があり、政府が見直しを検討しているようです。

 住宅ローン控除とは、新築など一定規模の住宅を取得しようとその資金を銀行などから借り入れした際、ローンの借入残高の1%を限度として所得税額から控除を受けられる制度です。

 この制度の役割としては、住宅ローンの返済負担を軽減させることでその後の生活不安を解消し、スムーズに事を運ぶことができる「住宅投資の喚起効果」であったり、住宅の取得に伴う家電や家具などの耐久消費財の購入による「景気の刺激効果」などがあります。

 しかし、今の低金利時代において現行の借入残高に対して1%の所得税が控除されるという仕組みは、時代に合っていないとの見方があるのも事実です。

 現実的には住宅ローンの金利を1%未満で借りている人も多く、支払利息の負担を軽くする制度だったのが、実のところ支払利息を住宅ローン控除の額が上回る「逆ざや」になる現象が起きてしまっている場合もあり、これが問題視されるようになりました。

 2020年に一度、見直しが検討されたものの現状のままで据え置かれました。しかしながら上記のような実態を踏まえて、近い将来は住宅ローン控除制度が本格的に見直しされるかもしれませんね。

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.03.01更新

 個人的な財産について、税務署はどの程度まで把握しているのだろうか。

 このような疑問を抱いたことはありませんか?

 不動産や預金、株などは法務局や銀行、証券会社に問い合わせれば容易に把握できますが、タンスの中の現金までは分からないだろうと思っている人は多いのではないでしょうか。

 ところが、これがそうでもないのです。

 国税庁では適正かつ公平な税金の負担や、その徴収の実現のために申告書の収受や処理、納税者の管理、調査・指導、資料情報の収集や管理、税務に関する相談などといった一連の業務について「国税総合管理(KSK)システム」を使っています。

 これは全国の国税局と税務署をネットワークで結び、情報を一元的に管理するシステムです。

 私たちの収入や財産は、給与の源泉徴収票や毎年の確定申告により把握されているのです。

 例えば、ある家族に相続が発生した場合、被相続人(亡くなった人)の生前の収入からすると2億円ほどの財産があってしかるべきだとKSKシステムが予想したのに対し、申告書には1億円と記載されていたとします。

 被相続人が生前に使ってしまったのか、またはタンス預金などで1億円ほど隠し持っているのか。

 それを確かめるために税務調査官が出向いて真実を追求する流れとなります。

 悪いことはできない仕組みになっているようですね。

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.02.01更新

 「会社に飾るため地元の作家の絵画を購入しようと考えています。絵画は経費として処理してよいのでしょうか」という質問がありました。

 事業などの業務のために用いられる資産で、建物や備品など時間の経過によってその価値が減っていく資産を減価償却資産といいます。

 絵画や彫刻などの美術品が減価償却資産に該当するかに関して、2015年以後に取得するものから新しい取り扱いが適用されています。

 それ以前は1点20万円(絵画は号当たり2万円)以上かどうかなどで判定されていましたが、実態と照らし合わせて改正後は1点100万円未満である美術品は原則として減価償却資産に該当し、100万円以上のものについては非減価償却資産として取り扱います。

 ただし、金額に関係なく時間の経過により価値が減少することが明らかなものは減価償却資産として、逆に価値が減少しないことが明らかなものは非減価償却資産として取り扱われるため注意が必要です。

 倉庫などに保管されている絵画などでも維持管理がされており、いつでも展示できる場合は減価償却資産の対象となります。

 また「何年で償却するか」という法定耐用年数は、金属製の彫刻などは15年、それ以外の彫刻や絵画、陶磁器などは8年です。

 ちなみに絵画の場合、額縁の費用についてもその絵画の一部として取得価額に含められます。

投稿者: 伯税務会計事務所

2021.01.01更新

 今回は、少し税務から離れて「株式」について考えてみましょう。

 2006年5月に新会社法が施行されましたが、基本的に株主より相対的に立場が弱い債権者保護に重きを置くものでした。

 と同時に、株主の中でも株主総会の多数決で必ず負けてしまうような「少数株主」の権利も拡充されました。

 これにより少数株主でも経営者にとって脅威となることがあります。

 少数株主の権利には株主総会提案権・帳簿閲覧権・取締役等の解任請求権・株主総会招集権などがあり、それらを行うための要件には議決権数と株式数、保有期間があります。

 具体的な例を挙げると、会社の帳簿を閲覧するには「総株主の議決権の3%以上または発行済株式総数の3%以上」の株式を所有していればよく、株式の保有期間の定めはありません。

 また株主総会を招集するには「総株主の議決権の3%以上」の株式を所有し、それを行う前に6カ月以上の保有期間があればOKです。

 このように少数株主でも会社に対して色々な権利を行使することは可能となりました。

 これらの対策としては「新たな少数株主を生まない工夫」「少数株主からの株式の買い取り」「会社の実情に合わせて発行できる種類株式の活用」などがあります。

 すでに少数株主が存在している会社は、どのような権利やリスクがあるのか具体的に確認しておきましょう。

投稿者: 伯税務会計事務所

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