昭和の高度成長期を代表する「三種の神器」といえば、白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫。
夢の家電製品として多くの家庭が憧れていたのは、その機能性や利便性が豊かさを象徴していたからでしょう。
何事も効率重視。すぐに「利益は?費用対効果は?」と問われた古き良き昭和の時代。
しかしその効率重視の価値観は、今や大きく変わりました。
モノと情報であふれかえった令和の時代に差別化を図るには、利便性や機能、価格競争だけではとても適いません。
今どきのキーワードは「ストーリー」なのです。
顧客の心に響くストーリーを、商品やサービスにどのようにしてまとわせるかが鍵となります。
例えば、大阪府大阪市で数十年来ハンコの町工場を営んできた岡田商会が手がけた「ねこずかん」は、猫のイラストに名前を入れることができる印鑑で、累計13万本を超える売り上げを記録しています。
ヒットの要因は単なる可愛らしさだけではありません。
「わが家の愛しい猫の名前が印鑑になる」という個人的なストーリーが、猫好きの琴線に触れたようです。
そこに湧き上がる温かい感情や懐かしい思い出が消費者の心に刺さったようです。
「好き」をつくる町工場を自認している岡田商会のモットーは「義務を、遊びに。」小さな会社だからこそできる、顧客一人ひとりの感情に寄り添う視点がクチコミを呼び、熱烈なファンを生み出す原動力となっているのでしょう。
モノがあふれかえる現代、人々の心を動かす「小さなストーリー」こそが、競争を勝ち抜くための最強の武器となる。
岡田商会の挑戦は、その事実を私たちに教えてくれます。