2016.12.01更新

 近年は経済のグローバル化が進み、海外支店に転勤する人なども増えてきました。

 日本国内の会社に勤めている給与所得者が、1年以上の予定で海外の支店などに転勤する場合は、一般的には「日本国内に住所を有しない者」と判断されて所得税法上の「非居住者」となります。

 この非居住者が日本国内において、不動産賃貸収入や資産の譲渡による所得など、一定の所得がある場合には日本で確定申告が必要となります。

 このような場合にその非居住者に代わって、申告書や届出書の提出、税務署から届く書類や国税の納付・還付などの受領を行う人を「納税管理人」といいます。

 納税管理人になれるのは、国内に住所または居所を有する人で、個人でも法人でも構いませんし資格なども不要です。

 ですから一般的には家族や親族、または税理士や弁護士などの専門家に依頼することが多いようです。

 ただし、資格がない家族や親族が納税管理人になった場合には、税理士法に定められた税理士独占業務以外の代行業務しか行うことができないので注意が必要です。

 税理士独占業務には「税務申告書の作成」や「届出書の作成」などがあります。

 最後に非居住者である本人が納税義務を履行しない場合についてですが、納税義務は本人にあるため納税管理人が財産を差し押さえられるなど、連帯納付義務を負うことはありません。

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.11.01更新

 国税の税務調査などで申告漏れなどの指摘をされた企業や個人は、処分に不服があれば処分の通知を受けた日の翌日から3カ月以内に(1)「税務署長等に対する再調査の請求」か(2)「国税不服審判所長に対する審査請求」のいずれかを行うことができます。

 また(1)により決定した処分になお不服がある場合には、決定の通知を受けた日の翌日から1カ月以内であれば(2)を行うこともできます。

 さらに(2)によって裁決された処分に不服がある場合には、その裁決があったことを知った日の翌日から6カ月以内に、裁判所に「訴訟」を提起することができます。

 このように税務署長等が行った処分に不服がある場合には、(1)や(2)を経るなどして最終的に訴訟となります。

 近年の訴訟では、東京国税局から約3995億円の申告漏れを指摘された日本IBMの持ち株会社が、国に約1200億円の課税処分取り消しを求めた訴訟がありました。

 この訴訟は今年2月にIBM側の主張が認められて課税処分が取り消しになりました。

 国税庁の発表によると処分を不服として裁判で争う件数は平成24年度340件、平成年25度290件、平成26年度237件と年々減っているようで、平成27年度は231件と平成16年度552件の半分以下でした。

 減少の背景には、税務調査のルールが明確になったことなどがあるようです。

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.10.01更新

 公的年金に上乗せして給付を受ける私的年金のひとつに「確定拠出年金」があります。

 掛金を定めて事業主や加入者が拠出し、運用は加入者自らが行います。

 将来の給付額は掛金とその運用益との合計額によって決まるというのが、確定拠出年金の仕組みになります。

 これには事業主が実施する「企業型」と個人で加入する「個人型」があり、個人型は平成29年1月から加入者の範囲が拡大され、基本的には全ての人が加入できるようになります。

 また個人型の税制優遇措置には次のようなものがあります。

 まずひとつが「掛金が全額所得控除」になります。

 例えば毎月の掛金が2万円で税率が20%だとすると節税効果は年間48000円、25年間で総額120万円になります。

 次に「運用益も非課税で再投資」されます。

 通常、金融商品の運用益には源泉分離課税がかかりますが、個人型の運用益は非課税になります。

 そしてもうひとつは「受け取るときの優遇措置」です。

 老齢給付金を一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」という控除が受けられます。

 注意点としては「自分で運用」する自己責任型の制度であることや、中途での引出しに制限があり原則60歳まで引き出すことができないこと、加入時の手数料や毎月の口座管理費が必要になることなどが挙げられます。

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.09.01更新

 日々、増える領収書や契約書といった紙の書類を、どのように保管していますでしょうか。

 実はこうした紙の書類を「デジタルデータに変換して保存」することができる制度があるのです。

 それは「スキャナ保存制度」といって、一定の要件に従ってデータを保存すれば、紙の書類は処分することができる制度です。

 これにより書類を保管するスペースが不要になり、災害などで被害にあった場合には大事な書類を紛失するリスクも低くなります。

 この制度は10年以上前からありますが、要件が厳しくほとんど利用されていませんでした。

 しかし、2015年の税制改正で要件が大幅に緩和され、これまでより使いやすい制度に変わりました。

 主な改正点は、3万円以上の領収書や契約書なども制度の対象になった点や、デジタル化した日時を証明するタイムスタンプがあれば、電子署名の付与は不要になった点などでしょう。

 タイムスタンプとは、電子データがある時刻に確実に存在していたことを証明する電子的な時刻証明書です。

 領収書や契約書などの書類がたくさんある場合には、スキャナで読み取る手間がかかります。

 またタイムスタンプが利用できる環境を整える必要もあります。

 改正により使いやすい制度にはなりましたが、これまでの手間や費用などを比較検討して利用する必要がありそうです。

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.08.01更新

 平成27年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」は、倒壊の危険や著しく衛生上有害となる空き家などを「特定空家等」と位置付け、市町村が撤去・修繕命令などを行うことで地域住民の生活環境を保全することなどを目的としています。

 そして「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、このような空き家の発生を抑制するために創設されました。

 これまでは別居していた親の住まいを相続し、空き家となった家やその敷地を譲渡した場合には、特別控除の適用が認められていませんでした。

 しかし「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」では、このようなケースでも要件を満たすと3000万円の特別控除の適用が認められるようになりました。

 その要件には「相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ特例の適用期間である平成28年4月1日から平成31年12月31日までに譲渡すること」「昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること」「譲渡価額が1億円を超えないこと」「被相続人(相続財産を残して亡くなった人)が居住していた家屋を相続した相続人が、その家屋(譲渡の時に耐震基準を満たしていること)と敷地、または取り壊し後の敷地を譲渡した場合」などがあります。 

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.07.01更新

 平成27年度は「法人税の税率の引下げに関する改正」「受取配当等の益金不算入制度の見直し」「欠損金の繰越控除制度等の見直し」「国際課税に関する改正」などの税制改正がありました。

 今回はその中から「法人税の税率の引下げに関する改正」と「欠損金の繰越控除制度等の見直し」を取り上げました。

 「法人税の税率の引下げに関する改正」では、法人税の税率が25.5%から23.9%に引き下げられました。

 対象は普通法人、一般社団法人等、人格のない社団等になります。

 また中小企業者等の法人税率の特例については、適用期限が2年延長され平成29年3月31日までになりました。

 この特例は、所得金額のうち年800万円以下の金額に対して法人税の税率を15%とするものです。

 次に「欠損金の繰越控除制度等の見直し」です。

 平成29年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間が9年から10年に延長されました。

 これに伴い帳簿書類の保存や更正の期間制限・請求期間についても10年に延長されました。

 なお、中小法人等以外の法人については、各事業年度の欠損金および災害による損失金の控除限度額が次のように縮小されました。

 平成29年3月31日までに開始する事業年度については控除前所得の100分の65相当額、平成29年4月1日以後は100分の50相当額となります。

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.06.01更新

 平成28年の税制改正により、平成28年1月1日から通勤手当の非課税限度額が10万円から15万円に引き上げられました。

 通勤手段は電車やバスなどの交通機関を利用する以外にも、自動車や自転車などさまざまです。

 また交通機関には新幹線もありますし、自動車では有料道路を利用することもあります。

 こうした通勤時にかかる費用として会社から支給される通勤手当は、条件を満たせば非課税になります。

 ただし手段により非課税限度額が決められています。

 また1カ月あたりの非課税限度額を超えて支給された通勤手当などは、超える部分の金額が給与として課税されます。

 非課税限度額は電車やバスなど交通機関を利用して通勤している場合や、自動車などで有料道路を利用して通勤している場合には、1カ月あたり15万円となります。

 ただしこれは通勤のための運賃・時間・距離などの事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の運賃等の金額とされています。

 なお新幹線を利用した場合も「経済的かつ合理的な方法による金額」に含まれますがグリーン料金は含まれません。

 自動車や自転車などの交通用具を使用して通勤している場合は、通勤距離が片道2km未満は全額課税、55km以上なら31600円といったように、通勤距離により1カ月あたりの非課税限度額が決められています。 

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.05.01更新

 医療費控除は自分だけでなく、生計を一にする家族などのために支払った医療費も対象になります。

 勤務の都合や修学、療養などのために家族と別居している場合でも、余暇にはいつもきまって日常の生活を一緒にしていたり、常に生活費や学資金、療養費などの送金が行われている場合は対象になります。

 次に医療費についてですが、医師または歯科医師による診療や治療の対価は医療費控除の対象になりますが、医師等に対する謝礼金などや健康診断の費用は原則として対象になりません。

 また風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は対象になりますが、病気の予防や健康増進のために使用するビタミン剤などの購入代金は対象になりません。

 ちなみに要件を満すと、スポーツジムや温泉の利用料が医療費控除の対象になります。

 その要件には、医師の処方に基づく運動療法や治療のための温泉療養であることや、厚生労働大臣が認定した施設であることなどがあります。

 最後に医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が対象になります。

 保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引き、最終的に10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%)を超えた部分の金額が控除の対象になります。

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.04.01更新

 平成25年度の税制改正により、平成28年1月から法人に対する利子割(地方税)が廃止されました。

 これにより平成28年1月1日以降、法人に対して支払われる預金利息等から地方税の特別徴収がされなくなりました。

 利子割は、銀行や信用金庫などの預金や公社債などの利子等に課税され、金融機関などが利子等を支払う際に特別徴収していました。

 具体的には、これまで国税と地方税を合わせて20.315%の税率で課税されていたものが、そのうちの地方税5%が廃止され15.315%になりました。

 仮に預金利息が10万円の場合、国税の15,315円と地方税の5,000円で合計20,315円が特別徴収されていたものが、改正後からは国税の15,315円のみとなりました。

 法人は、法人税割額算出の基となる課税所得に利子も含まれるので、そのままでは利子割との二重課税になってしまいます。

 そのため法人は利子割額を計算し、状況により控除して納税もしくは還付を受けていました。

 今回の利子割廃止により、法人や各都道府県はこれに伴う事務作業が軽減されることになります。

 また各都道府県においては、還付金以上の振込手数料を使って還付することも少なくなかったようで、こうした負担も軽減されるようです。

 なお、利子割の廃止は法人だけで、個人に対して支払われる預金利息等については従来通りに特別徴収されます。

投稿者: 伯税務会計事務所

2016.03.01更新

 平成28年度政府予算案の一般会計総額は、96.7兆円と過去最大になりました。

 今回は「経済再生と財政健全化の両立」がポイントで、具体的には「一億総活躍社会の実現」「持続可能な社会保障制度の確立」「事前防災・減災対策の充実や老朽化対策など国土強靭化の推進」「教育の質向上や科学技術の基盤強化」などが挙げられています。

 一般会計の歳出内訳は、社会保障関係費が31.9兆円で最も多く全体の約33%を占めています。

 一方、これを支える歳入は税収と公債金でまかなわれます。

 バブル景気の発端といわれるプラザ合意は1985年(昭和60年)でした。

 その昭和60年度の税収は38.2兆円で、バブル景気で一番高かった平成2年度は60.1兆円でした。

 そして今年度は、消費税率が8%になったことや企業業績の向上などにより、57.6兆円の税収が見込まれています。

 国の税収には、法人税・所得税・相続税・贈与税・印紙税・消費税・酒税・たばこ税などさまざまありますが、そのうち最も税収が多いのは所得税で今年度は17.9兆円が見込まれています。

 その他では消費税が17.1兆円、法人税が12.2兆円で、これら3つの税が税収のほとんどを占めます。

 社会保障の負担などで公債金の残高が増える日本ですが、その残高を増やさないためにも経済再生が進み財政が健全化されることを願いたいですね。

投稿者: 伯税務会計事務所

前へ 前へ

entryの検索

月別ブログ記事一覧

カテゴリ