2026.05.15更新

 ベテランの木工職人が弟子に言ったそうです。「一流の仕事は、どこを削るかに出る」。これは商売にも似たような側面があります。

 新しい事業、新しいサービス、新しい人材など、経営者であれば「足す」ことへの嗅覚は自然と磨かれていきます。

 成長への欲は経営者の本能のようなものです。同業他社が新しいことを始めたと聞けば気になるし、取引先に新商品をすすめられれば断りづらく、気づけば手を広げすぎていた。そんなこともあるでしょう。

 ところが「やめる」となると途端に足が重くなるのも事実です。長年続けてきた事業、古くからのお客さま、なじみの取引先、共に苦労してきた社員がいる部門部署。そこには決して数字だけでは測れない歴史があります。

 「やめる」という判断は、その歴史ごと否定するような罪悪感を伴い、だからこそ多くの経営者は薄々気づきながらも決断を先送りにしてしまうのです。

 しかし、それは弱さではなく、むしろ誠実さの表れだと思います。

 ただ、誠実さと執着は、ときに見分けがつきません。

 続けることが「責任」なのか、それとも「慣性」なのか。その境界線は外からは見えづらく、自分でも気づきにくいものです。

 「これは誰のために続けているのか?」そう自問したとき答えがすっと出てこないなら、それは「何かを削る」引き算のサインかもしれません。

 どこを削るか。何を残すか。

 余分を削り落とすことで作品の完成度を際立たせる木工職人ように、商売もまた、やめる決断の先に会社の本当の姿が浮かび上がることがあるかもしれません。

 削った先に何が残るか。何を残したいか。その問いが次の一手でしょう。

投稿者: 伯税務会計事務所

2026.04.15更新

 従業員のやる気がない。覇気がない。叱咤激励を繰り返しても結果は思わしくない。

 このような経験はありませんか?

 精神科医ウィリアム・グラッサーが提唱した選択理論心理学は、この悪循環に明快な答えを示します。

 それは「他人は変えられない。変えられるのは自分だけ」という原則です。

 選択理論によれば、私たちの全行動は「行為」「思考」「感情」「生理反応」の4つの要素で構成されています。

 朝、デスクを整理するのが「行為」。

 これで今日も良い一日になると考えるのが「思考」。

 そこから生まれる前向きな気持ちが「感情」。

 前向きな気持ちで背筋が伸びるのが「生理反応」です。

 この4つのうち自分が直接、コントロールできるのは「行為」と「思考」だけです。

 残りの「感情」と「生理反応」は行為や思考の結果として自然に生じるものなので直接、コントロールしづらい要素です。

 優れた経営者は「物事にはコントロールできるものとできないものがある」ことをよくわかっています。

 直接、コントロールできない従業員のやる気を何とかしようとする代わりに、自らの「行為」と「思考」を変える努力をします。

 指示の出し方、対話の質、環境づくりといった「自分がコントロールできること」に集中するのです。

 自分が変われば結果として周囲も変わり始めます。

 これは相手を変えたのではなく、自分の変化が相手に新たな選択肢を提示したからにほかなりません。

 「なぜやる気がないのか?」という思考を「私は関わり方をどう変えられるか」にシフトする。

 この発想の転換こそが組織を動かす鍵となり、従業員のやる気を促すのです。

投稿者: 伯税務会計事務所

2026.03.15更新

 2026年、生成AIはもはや特別なツールなどではなく、まるで空気のように商売の現場に溶け込んできます。

 経営の効率化。データに基づいた最適解の提示。

 これらはAIが得意とする領域であり、経営者が長年磨いてきた「正解を出す力」というスキルの価値は、かつてないほど相対化されています。

 この時代をどう生き抜いていくか。この問いに対するひとつの答えは、効率の向こう側にある「人間としての厚み」ではないでしょうか。

 これまで大切にしてきた膝を突き合わせた交流や、はた目には無駄に思える部下や顧客との雑談、あるいは現場で磨かれた「なんとなく」という直感。

 これらは単なる非効率ではなく、論理だけでは説明しきれない経営の奥行きそのものです。

 この計算不可能なプロセスの中にこそ、AIにはマネできない共感や独自の企業文化が宿ります。

 相手のわずかな表情の変化に気づき、決して数字に表れない現場の温度感を巧みに感じ取る。

 これは、多くの修羅場をくぐり抜けてきた経営者の「身体知」がなせる業です。

 目的のない対話、感性を刺激する文化や芸術、あるいは古典を紐解いて思索にふける時間。

 そうした一見、遠回りに見える時間が組織に独自の彩りを与え、競合にはマネできない唯一無二の価値を生み出します。

 情報の算出や分析はテクノロジーを賢く使いこなしつつ、その先にある「商売の歩むべき意味」を自分で創り出す。

 効率の網からこぼれ落ちる豊かな経験の中にこそ、次の時代を切り拓く商売の種が潜んでいるように思います。

 すべてが数値化・自動化される時代だからこそ、あえて「余白」を大切にしたいものですね。

投稿者: 伯税務会計事務所

2026.02.15更新

 経営者にとって新幹線は単なる移動手段ではありません。

 流れる車窓を眺めながら一人静かに戦略を考える、大切な思索の時間でもあります。

 ところで、東海道新幹線の「こだま」「ひかり」「のぞみ」の名前の並びは速度の順だけでなく、そこには深い意味が隠されているのをご存じでしょうか。

 まず「こだま」の由来は「木霊(山彦)」であり「音速」を表しています。

 次に登場したのが「ひかり」です。アインシュタインの相対性理論によれば、光の速さは音速よりはるかに速く、物理学の世界では光が絶対的な速さの頂点に立っています。

 しかし、その「ひかり」よりもさらに速い列車として名付けられたのが「のぞみ」でした。

 「のぞみ」とは、人の「願い」や「希望」です。物理的な物質は光の速さを超えることはできませんが、人の思いや希望は時間も距離も一瞬で飛び越え、目的地へと到達できるのです。

 「音(こだま)」より速い「光(ひかり)」。そして、絶対的な物理の法則さえも超えるのが「希望(のぞみ)」です。

 この命名には、技術への誇りだけでなく、人の意志への深い敬意が込められているように感じます。

 商売も同じではないでしょうか。論理的な分析や市場データという「光」のような正確さは、もちろんとても大切です。

 けれど、誰も見たことのない未来を切り拓き、困難な壁を突破する力は、理屈を超えた「こうありたい!」という強い願いから生まれるものだと思います。

 希望は商売をする上での大きな原動力ですが、また商売を通じて人々に希望を届けたいという思いも、同じくらい大事にしていきたいと思うこの頃です。

投稿者: 伯税務会計事務所

2026.01.15更新

 昭和から平成初期のモノづくりを支えた技術者の情熱に今、再び注目が集まっています。

 例えば、昨年のNHK「新プロジェクトX」で特集された初代プレイステーション(PS)誕生秘話は、まさに技術者たちの信念が逆境を打ち破った劇的な挑戦の歴史です。

 1990年代初頭「ゲームは2Dが主流」という時代に、ソニーの技術者だった久夛良木(くたらぎ)健氏らは、映画のようなリアルタイム3DCGを家庭で実現するという無謀な夢を追いました。

 任天堂との共同開発計画が土壇場で白紙撤回され、社内外から「ソニーのゲーム業界進出は不可能」と冷遇され、巨大組織の中で異端児扱いされても「未来は3Dにある」という信念を貫き、リアルタイム3DCGという誰も成し遂げていなかった未来を信じました。

 その信念が、それまで子ども向けだったゲームを、世界を牽引するエンタメの王道へと押し上げ、今日のゲーム産業の礎を築きました。

 PS誕生秘話は、組織の壁と世間の常識に立ち向かい、未来への「一手」を信じ抜いた技術者魂の記録でもあるのです。

 PS発売から約30年が経った今、私たちがこの歴史から問われていることは何でしょう。

 異端の技術者たちが常識に挑んだように、私たちも日々の生活や仕事で「無謀」と笑われるかもしれない未来への一手を打てるかどうか。

 現状維持という名の殻を破って新たな道を切り開く勇気が持てるかどうか。

 逆境を力に変えていけるだけの強い信念があるかどうか。

 今までの成功体験に縛られず、軽やかに、けれどひたむきに、そして大胆に「異端の一手」を打ち続けたいと思う新年です。

投稿者: 伯税務会計事務所

2025.12.15更新

 2025年は気候のリズムが例年以上に乱れ、春の桜は早く咲き、夏は記録的な猛暑、秋はあっという間に駆け抜けました。

 当然のことながら自然の変化は暮らしだけでなく、少なからずビジネスにも影響しました。

 業務やスケジュールが左右され、エアコンの電気代や物流のコストなどが重くのしかかり、変化に合わせた選択や行動が経営の安定に不可欠でした。

 小さな判断や工夫の積み重ねが結果として会社を支えることを実感し、経営者として重要な学びにもなったのではと思います。

 大変な年ではありましたが、変動の多い1年を通じて「社員も経営者も対応力を磨くチャンスに恵まれた」と前向きに捉えたいところです。

 さて、年の瀬の今こそ振り返りたいのは「今年うまく機能した柔軟さ」と「来年に持ち越す課題」です。

 特にこれからの時代、従業員の働きやすさや健康をどう支えるかは、会社の規模や業種を問わず考えておきたいテーマです。

 フレックスタイム制など勤務時間の調整や休憩の取り方、オンライン会議の導入、オフィス環境の快適さなど、日常のちょっとした工夫が集中力や体調の維持に役立つでしょう。

 こうした配慮は単なる福利厚生にとどまらず、社員の安心感や定着率、取引先からの信頼にもつながります。

 人材確保が難しい時代だからこそ「健康を守る経営」は企業の信用力を支える重要な要素になると思います。

 時代の変化は避けられません。

 気候や社会の揺らぎを「リスク」と捉えるだけでなく、挑戦や改善の「機会」として受け止め、自分たちのリズムに変えていくためにはどうしたら良いか?そんなことを自問自答しながら迎える年の瀬です。

投稿者: 伯税務会計事務所

2025.11.15更新

 イーロン・マスクは9歳でブリタニカ百科事典全巻を読破し、若い頃は1日最大10時間もSF小説を読んでいたのは有名な話です。

 「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫さんも若い頃から哲学書や歴史書などを読みあさり、独自の経営哲学「京セラフィロソフィ」を築き上げました。

 多読で知られる孫正義さんは、特に歴史小説、中でも司馬遼太郎の作品から多くの知見を得たと公言しています。

 多忙を極める経営者たちは、なぜそこまでして「紙の本」を読むのでしょうか。

 その理由は、読書が「コストパフォーマンスに優れた最高の自己投資」だからではないかと思います。

 本は、先人たちが膨大な時間と労力をかけて築き上げた知恵と知識の結晶であり、彼らの成功と失敗の記録ともいえます。

 私たちが直接、経験できることには限りがありますが、読書を通じて他者の仕事観や人生の軌跡を追体験することで、自分の経験値を飛躍的に高めることができるのです。

 また読書によって多様な思想や価値観に触れることで、自分なりの考えや信念、確固たる判断基準を築くことにも役立つでしょう。

 読書習慣のある成功者に共通しているのは、単に知識を得るために本を読むのではなく、歴史や哲学から人生や経営の本質を学び、独自の哲学や確固たる判断基準を築くために読書を活用している点です。

 インターネット上の情報が短期的なビジネスのヒントだとすれば、紙の本は永続的な自己成長を支える羅針盤といえるでしょう。

 本の解説動画やオーディオブックも便利ですが「自分の血や肉となる最高の自己投資」を目指すのであれば「読む」に勝るものはなさそうです。

投稿者: 伯税務会計事務所

2025.10.15更新

 効率化や最適化が「良いこと」とされた時代が長く続いたせいで、私たちはあらゆる無駄を削ぎ落とし、最短ルートでゴールを目指すことに慣れすぎてしまったように思います。

 しかし、常識がどんどん変わっていく中で「無駄のない状態」こそが、新しいアイデアや価値を生み出す最大の障害になっているのでは?と思うことが増えました。

 ある老舗和菓子屋の社長は、経営効率を上げるために職人の作業時間を1秒単位で短縮しようと試みました。

 一見、すべてが順調に進んでいるように見えましたが、次第に職人の表情から活気が失われ、新しい季節商品のアイデアもまったく出なくなったそうです。

 そこで社長は、あえて「余白」を作ることを決意しました。

 毎日1時間、職人が自由に過ごせる「休憩時間ではない時間」を設けたのです。

 最初は戸惑っていた職人たちも、お互いの話をしたり散歩に出かけたりするようになると「川沿いの道端で見つけた珍しい花をモチーフにしたお菓子はどうだろう?」「子どもの頃の思い出のお菓子を再現してみよう」など、無駄に思えた時間から新しい商品が次々と生まれ、社員間のコミュニケーションも活発になるという好循環が生まれました。

 「ポストイット」や「電子レンジ」など、無駄な時間や遊び心から生まれたイノベーションは数多くあります。

 日々の仕事に追われ、頭が「やるべきこと」でいっぱいになっていると、新しい視点を持つことはなかなか難しいものです。

 一度立ち止まり、あえて「余白」を生み出してみる。その何もない「余白」から生まれる遊び心や探究心は、会社が成長していく土壌になるかもしれません。

投稿者: 伯税務会計事務所

2025.09.15更新

 先日のこと、コンビニで「糖質オフ」「脂質オフ」「塩分控えめ」のお弁当を手に取りながら、ふと疑問が湧きました。

 健康を気にするあまり、本質的なことを見失っていないだろうか?これは経営にも通じる話だと思いました。

 マネジメントの父と呼ばれたドラッカーの名言に「重要なのは正しい答えを見つけることではなく、正しい問いを探すことだ」があります。

 例えば「売り上げを伸ばすにはどうするか?」と考え、答えを探すことは大事です。

 けれどその前に「何のために売り上げを伸ばすのか?」という問いを立てるべきかもしれません。

 知人の社長は「求人広告の出し方」で悩み続けていました。

 でも本当の問いは「どんな人と働きたいか?」だったと気づき、会社のビジョンを言語化した途端、自然と共感する応募者が集まるようになったそうです。

 かつてスティーブ・ジョブズが「この製品は何ができるか?」ではなく「人々の生活をどのように変えるか?」と問いを立てたように、問いを変えるだけで物事の質が変わるのです。

 話は冒頭に戻りますが、コンビニで最終的に私が選んだのは、糖質オフでも脂質オフでも塩分控えめでもない、普通の鮭弁当でした。

 「午後からもうひと踏ん張りするには何を食べたらいいか?」と自分に問いかけた結果「好きなものを食べよう!」と思ったからです。

 健康でいることも大事。けれど「何を大事にしたいのか?」という問いを持つことのほうがもっと大事だと気づきました。

 間違った問いへの正しい答えは、どれほど完璧でもまったく役に立ちません。正しい問いは、素晴らしい経営スキルといえそうですね。

投稿者: 伯税務会計事務所

2025.08.15更新

 孔子の「義を見てせざるは勇なきなり」という言葉を、一度は耳にしたことがあるでしょう。

 正しいと分かっていても踏み出せないとき、まさにこの言葉が胸に刺さります。

 やれDXだAIだと世間が騒ぐ中「うちは昔ながらのやり方で十分だ」と思われる方もきっと多いと思います。

 確かに長年、培った顧客との信頼関係は宝物です。

 しかし『三国志』の名君・劉備(りゅうび)を思い出してください。

 彼は伝統的な「仁義」を重んじながらも、時代の変化に合わせて天才軍師・諸葛孔明(しょかつこうめい)という新しい力を迎え入れました。

 諸葛孔明は劉備の右腕として数々の知恵を授けた人物です。

 劉備が志を掲げ、諸葛孔明が実現を目指した関係性といえるでしょう。

 そして、今の商売で諸葛孔明の役割を果たしてくれるのが「テクノロジー」かもしれません。

 AIで顧客管理をすれば長年のデータがより確かなものになり、クラウドで営業情報を共有すればチームの連携が格段にスムーズになるでしょう。

 人間味を失うのではなく、むしろ「人」が本来の力を発揮できる環境を整えるためにテクノロジーを使う。

 大げさな変革でなくても、社員のスキルとデジタルツールの小さな組み合わせから案外、大きな改善が生まれるものです。

 変化を恐れず、しかし人を大切にする。

 良いものは残しながら新しい武器も使いこなす。

 これは「人徳の君主」と呼ばれた劉備のやり方であり、現代の商売にもいかしたい英知です。

 時の名将が現代に生きていたらスマホを使いこなしていたか――。

 本質を見抜く目があれば、時代を問わず新しいツールを味方につけるのではないかと想像します。

投稿者: 伯税務会計事務所

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