【どこを削るか。何を残すか】
2026.05.15更新
ベテランの木工職人が弟子に言ったそうです。「一流の仕事は、どこを削るかに出る」。これは商売にも似たような側面があります。
新しい事業、新しいサービス、新しい人材など、経営者であれば「足す」ことへの嗅覚は自然と磨かれていきます。
成長への欲は経営者の本能のようなものです。同業他社が新しいことを始めたと聞けば気になるし、取引先に新商品をすすめられれば断りづらく、気づけば手を広げすぎていた。そんなこともあるでしょう。
ところが「やめる」となると途端に足が重くなるのも事実です。長年続けてきた事業、古くからのお客さま、なじみの取引先、共に苦労してきた社員がいる部門部署。そこには決して数字だけでは測れない歴史があります。
「やめる」という判断は、その歴史ごと否定するような罪悪感を伴い、だからこそ多くの経営者は薄々気づきながらも決断を先送りにしてしまうのです。
しかし、それは弱さではなく、むしろ誠実さの表れだと思います。
ただ、誠実さと執着は、ときに見分けがつきません。
続けることが「責任」なのか、それとも「慣性」なのか。その境界線は外からは見えづらく、自分でも気づきにくいものです。
「これは誰のために続けているのか?」そう自問したとき答えがすっと出てこないなら、それは「何かを削る」引き算のサインかもしれません。
どこを削るか。何を残すか。
余分を削り落とすことで作品の完成度を際立たせる木工職人ように、商売もまた、やめる決断の先に会社の本当の姿が浮かび上がることがあるかもしれません。
削った先に何が残るか。何を残したいか。その問いが次の一手でしょう。
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