2021.06.15更新

 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり。一度生を得て、滅せぬもののあるべきか」。

 桶狭間の戦いの前夜、天下統一への第一歩を踏み出そうとしていた織田信長が謡い舞ったという「敦盛(あつもり)」の有名な一節は、人の世の50年の歳月は天界の一日にしかあたらない、夢幻のようなものだと解釈されています。

 人の世の時のはかなさを意味するこの一節が、信長の琴線に触れたのかもしれません。

 それから460年以上が経ち、今や「人生100年」の時代を私たちは生きています。

 人生の時間が長くなった分、何が変わったのでしょうか。

 お釈迦様にこんな逸話があります。

 あるときお釈迦様が弟子たちに尋ねました。

 「人生の長さがどのくらいあるか、お前たちは知っているか?」。

 弟子の1人が答えます。「50年くらいでしょうか」。

 お釈迦様は首を横に振りました。「では、40年くらいですか」。別の弟子の答えにもお釈迦様は首を横に振ります。

 「30年」「20年」「10年」「1年」弟子たちは次々と答え、最後に「1時間」と答えてもお釈迦様は首を縦に振りません。

 そしておもむろにこう言ったそうです。

 「ひと呼吸の間である」。

 つまり、人生とは一瞬だとお釈迦様は言いたかったのでしょう。

 50年であろうと100年であろうと、人生は一瞬、一瞬の積み重ねです。

 一瞬の累計が50年か100年かの違いだけで、今この瞬間を生きることに変わりはありません。

 「今」という一瞬に集中しようと思ったら、あれもこれもはできません。

 本質的な課題は何か。その見極めは商売でも肝心要です。

 天界の時間に比べれば一瞬の幻に過ぎない人の世ですが、今できることに集中して、それが自分を含めた周囲の喜びや楽しみとなれば、それ以上に良いことはないでしょう。

 難しい問題をかかえているとしても、今できることをひとつずつやっていくことで困難を喜びに変えていく。

 そんな仕事を、そんな日々を積み重ねていけるのは、何にも増して豊かでありがたいことであると思うこの頃です。

投稿者: 伯税務会計事務所

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