2026.08.15更新

 経営者は数字に助けられます。

 売り上げ、利益、前年対比。数字は会社の状態を教えてくれる大切な道具です。けれど、数字にだまされることもあります。

 良く見える数字ほど、その裏側は見えにくくなるものです。

 ある会社に長く売れ続けている商品がありました。毎月の数字を見ても安定していて、経営会議ではいつも「これは残そう」という結論になります。

 ところがある日、現場の社員がぽつりと言いました。「あの商品、売れるんですけど、説明と対応にものすごく時間がかかっています」。調べてみると、売り上げは立っているものの、問い合わせ、修正対応、クレーム処理に多くの時間が使われていました。

 数字の上では優等生に見えていた商品が、実は現場の体力を少しずつ削っていたのです。目立つ数字だけで決めないことは判断力のひとつでしょう。

 売り上げがある。利益が出ている。長く続いている。そうした事実はもちろん大切です。

 しかし、そこにどれだけの手間が隠れているか。誰の負担で成り立っているか。未来の信用を前借りしていないか。

 そこまで見なければ判断したことになりません。経営者は「結果の数字」を見ることに慣れていますが、会社の本当の状態は「数字になる前」のところに出るものです。

 社員の小さなため息、顧客対応の手戻り、会議では語られない疲労感。

 そこに目を向けられるかどうかで判断の質は変わります。怖いのは、決して間違えることではありません。

 うまくいっているように見えるものを疑えなくなることです。会社を守る判断は、ときに「売れているもの」を見直す勇気から始まるのだと思います。

投稿者: 伯税務会計事務所

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